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梨木香歩「渡りの足跡」

読んだ後もかなりの余韻のあった本。

梨木香歩の小説では「家守綺譚」や「ペンキや」を読んだ事があり、
著者が植物や植生に詳しいことは知っていたが、
野鳥についでの造詣がかなり深いことをこの著書で初めて知る。

「渡り」を行う野鳥を追い、知床や諏訪湖、カムチャッカへと
足繁く通う著者。
オオワシ、オジロワシ、ワタリガラス、カワラヒワ、ウソ、
ヤマゲラ、ヒヨドリ、ドバト、オオヒシクイ、アカモズ、
クビワキンクロ、トガリネズミ、ハチクマ……

数えていないけれども、本書にはまだまだたくさんの鳥や動物が登場する。
南方止まりで本来は越冬しないはずの鳥が紛れ込んでいたり、
群れから逸れ、ひとり(一羽)孤独に旅をする個体の話など、
鳥との関わりを長く持つ著者の眼差しそのものの現れが
とても興味深かった。

それと同じくらい引きつけられたのが、
渡りの鳥たちの話の間に差し込まれた、日常でふと関わった人々の話。
宅配業者のふりをして強引に玄関を開けさせて
布団のクリーニング業を行う若者の業者や、
駅のホームで見かけた、下着を突然鞄から取り出す女性、
「ノーノーボーイ」として戦時中アメリカの収容所で過ごした老人。
どれも強烈なエピソードだけれども、同じ日常のライン上にある、
隣人や、そして自分にも関わる話だと思えた。


学生の頃、満員電車の中でつり革につかまりながら、
北海道のヒグマが同じ時間に同じ国で生きている事がとても不思議だったと
想像していた星野道夫の言葉を思い出した。

日が沈み、闇夜の中でも、星を頼りに鳥たちは渡りを続ける。
初めての渡りのための準備をするオオワシが、
遠く、カムチャッカ上空を旋回する。
その光景を想像するだけで、ヒグマのことを想う気持ちにも似た、
荘厳な気持ちになる。

どこかへ「渡り」をするときは、この想像した光景を忘れないでおこう。


”さあ、出発しよう、というときの衝動は、「帰りたい」という本能的な
帰巣本能とほとんど同じもののような気がしてならない。
 生物は帰りたい場所へ渡る。自分に適した場所。
自分を迎えてくれる場所。
自分が根を下ろせるかもしれない場所。
本来自分が属しているはずの場所。還っていける場所。
 たとえそこが、今生では行ったはずのない場所であっても。”

渡りの足跡

梨木 香歩 / 新潮社


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by bookscotocoto | 2012-08-27 22:10 |

台風

大きな台風が来るというので、
いつもより厳重に台風対策をした。

外に置いてある園芸用品の中で、風で飛びそうなものは重しを載せたり、
家の中に片付けて、
鉢植えの小さいものはお風呂場に、ブーゲンビリアやオリーブの大きな鉢は
玄関とお店に分けて運んだ。

窓には養生テープを貼り、
溝のところには新聞紙をぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
お店の窓のところは、シャッターの支柱が入居したときからなかったので、
もしも割れることになった時のことを考え、
内側から大きな板で塞いでおく事にした。

本は水が厳禁だ。
なんとか免れてほしい。
家の屋根も修理前なので雨漏りが心配だけど、
何度か経験した台風では、風があまりにも強いので
雨漏りはかえってしなかった。 
ありがたいような、そうではないような。


小さな植物園と化したお風呂場で洗濯をしていると、
急に煙草が吸いたくなり、
夫が海外に旅行に行った友人からもらった煙草があるのを思い出し、
6年振りに火をつけてみた。
久しぶりの煙草はおいしかった。

これからは台風が来ると、煙草が吸いたくなるのかもしれない。

読書を2冊。 
こんな時ではないとゆっくり読めないので
この時間はありがたい。
でも台風はやっかいなので、早く通り過ぎてくれる事を願うのみ。
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by bookscotocoto | 2012-08-26 17:00 | 日々

Unravel - Bjork


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by bookscotocoto | 2012-08-18 23:04 | 音楽

うどん

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うどんを食べるのは習慣です。
おそらく、沖縄そばより食べています。

暑いので、夏場は冷やしうどん。
お店の合間にささっと食べることが出来るし、簡単に作れるので
登場回数も多いです。

小豆島のそうめんも好き。


この写真のうどんは、
ねぎ、ニラ、ごま、キムチ、生卵の黄身を
載せています。
大根おろしを入れても美味しい。
ごまはフライパンでちゃんと炒ると良いです。
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by bookscotocoto | 2012-08-14 14:23 | 日々

ふるえる手

もう15年程前のこと。
ダブリンからロンドンへの旅の途中、
同席したイギリス人の青年と話をした。

「日本人?」「はい、そうです」
という会話から始まって、
日本のサルは温泉に入るのか? とか、
Bjorkは日本では流行っているのか? とか。
(ちょうど私は旅行中に「Debut」を聴いていた。)

その青年は和やか、かつスマートに会話を楽しませようと努力してくれて、
ちゃんとこちらの気持ちも汲み取ってくれていたし、
紳士の国だなぁ、と感心していた。

もうひとりの相席のおじさんも含めて、
私はカタコトのひどい英語だったけれども、
終点の駅までわいわいと話をした。
北海道のホワイトアスパラがおいしいって話まででてたっけ…。


荷物を準備して、列車もプラットフォームに着きそうになった時、
お別れの挨拶をと思い、まずはおじさんに握手をした。
次にイギリス青年に向かって手を出した。
でも、握り返してくれない。

早口で何か喋った後、青年はにこっと笑って少し気まずそうな顔をした。
そうしてポケットからアルコールの瓶を取り出して、
おもむろに飲み始めた。

私は、はっとした。
さっき相席で座っている間、彼は手を足の下に隠していた。
表に現れた彼の手は、ぶるぶると猛烈に震えていた。
アル中のために手の震えが止まらなくて握手が出来なかったんだと、
その時初めて分かった。
スマートな振る舞いは、彼の優しさだったんだと思った。


素敵な時間を作ってくれて、すごく嬉しかった。
見えなくなるまで手をふってくれて、雑踏にお互いが消えるまで
にこにこしてくれた。


忘れてないよー。
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by bookscotocoto | 2012-08-05 01:38 |

音のない世界で

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耳の聴こえない人から、最近手紙をもらった。
聾唖の知り合いも知人もいないので、
私は手紙が送られてくる事になった経緯に驚いて、
どうしていいのか想像が追いつかなかった。

言葉の書き方、話の進め方、解釈の仕方など、
健常者には分からないタイミングが手紙の中にあり、
とても考えさせられてしまった。


そうした手紙のやりとりが何度かあって、
偶然同じ時期に、映画製作をしている友人から
バリアフリーの字幕を作る話を最近おしえてもらったこともあり、
聾唖の人々の言葉に興味がでていたところ。

友人の話では、総務省からの発表により、
2017年にはBS、CS、民放すべてのチャンネルに
バリアフリー字幕の義務化が決定したとのこと。
洋画などにつけられる字幕制作と、バリアフリー字幕は
作り方が違ってくる。
前者のほうはたくさん技術者がいるけれども、バリアフリーの
ほうはまだまだ従事している人が少ないみたい。
ここ数年でバリアフリー字幕の制作現場は
環境が一変するんじゃないかな。


日本じゃないけれど、フランスのドキュメンタリー映画を観た。
ニコラ・フィリベール監督のドキュメンタリー、
「音のない世界で」。

フランスに住む聾唖の人々の日常。
音が瞬時に伝わらないもどかしさがよくわかる。
健常者と聾唖者の間で、だけれども。

音がない、わけではない。
聾学校では手話と同じように発声の方法も教えている。
映画に出てくる、泣き虫のとってもかわいい男の子は、
お母さんの喉元に手をあてて、震えの感覚で音を覚える。
口元の動きや、何となく補聴器に届く声でも判断しているようだった。


ほんとうに音のない世界に生きているのは
健常者のほうなんじゃないかと思ってしまう。
あふれすぎている音は、映画のワンシーンに映っていた
カーテンの斜光のように温かいだろうか。


ニコラ・フィリベール「音のない世界で」
http://www.vap.co.jp/nicolas/13121.html
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by bookscotocoto | 2012-08-01 00:53 | 映画


日常と非日常の対なすもののくりかえし。 消えて行くものの記録。


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